仕事を辞めるときは、引継ぎを行う必要があるのでしょうか?
仕事でつらい思いをした方ほど、1日でも早く辞めたいと思うものです。
それだけに「引継ぎまでしたくはない」と、考えてしまうかもしれません。
結論を先に書くと、引継ぎは行わなくても辞めることが出来ます。
ですが場合によっては、信義則上の引継義務を問われるケースもあるようです。
この記事では退職時に問題となりやすい、引継ぎについて書いています。
信義則上の義務がある
引継ぎについては、社内規則で義務としている場合や、信義則上の義務を問われるケースがあります。
信義則とは・・・
社会共同生活において、権利の行使や義務の履行は、互いに相手の信頼や期待を裏切らないように誠実に行わなければならないとする法理。信義誠実の原則。
引用:コトバンク
つまり人としての責任は果たしなさい、ということです。
(信義誠実の原則は、民法第1条第2項(基本原則)が該当するようです。)
引継ぎについて言えば、「引継ぎを行わないことで会社、あるいは後任が困るのなら、きちんと行うべきだ」ということですね。
損害賠償を請求されるケースもある
引継ぎを一切行わずに退職すれば、会社から損害賠償を請求される可能性もあります。
ただしこの場合は、次の2点を会社側が立証する必要があります。
- 引継ぎと損害の因果関係の証明
- 引継ぎ未了による損害額の算出
現実的にこの2点を立証することは難しく、損害賠償を請求されることはまずないと考えられます。
ですが引継ぎを行わずに退職した場合は、損害賠償を請求される可能性がある、ということを頭に入れておいてください。
最低限の引継ぎは必要
引継ぎは信義則上の原則がありますし、会社ともめる可能性もありますので、できる限り行うべきです。
ですが必ずしも完璧に行う必要はありません。
なぜなら完璧な引継ぎを行うには、「業務マニュアルの作成」あるいは「後任が1人前になるまでの教育」を行う必要があるからです。
またどの時点をもって完璧とするのかも、抽象的ですよね。
つまり完璧な引継ぎを求めると、いつ退職できるのかが分からなくなってしまいます。
そのため引継ぎはできる範囲で誠実に対応すれば問題ありません。
上司の承認は必要ない
会社によっては引継ぎの完了を上司が承認するケースもあります。
常識の範囲内で行われるのであれば問題ありませんが、承認できないことを理由に退職日を延ばすのは問題です。
そもそも引継ぎが完了していなくても、退職日が来れば退職することができます。
あくまでもできる範囲で誠実に対応すればいいのです。
後任不在で引継ぎが出来なくても退職は出来る
後任が決まらず引継ぎの相手がいなくても、退職することが出来ます。
なぜなら引継ぎは、必ずしも「人」に対して行う必要はないのです。
後任がいないのであれば、「引き継ぎノート」を作成して「会社」に対して引継ぎを行うことが出来ます。
引き継ぎノートには、配属された後任が困ることのないように、誠実に作成しましょう。
退職後に引継ぎをするために出社する必要はない
会社を退職すれば労働契約が解除されますので、それ以降は退職した会社に出社する必要はありません。
たとえ引継ぎが終わっていないとしても、退職日以降は引継ぎを行う必要がないのです。
労働者は会社に労働力を奉仕することで賃金をもらっています。
それなのに無償で引継ぎだけを行うのはおかしいですよね。
また会社としても、退職した人に業務を命令することはできません。
「引継ぎが終わっていないのだから、退職後も引き継ぎに来るのが当たり前だ」
という会社も存在するようですが、この言葉には何の効力もありません。
何度も連絡が来るようであれば、労働基準監督署に相談してください。
引継ぎ中に後任が辞めても退職日を延期する必要はない
引継ぎを行っていた後任が、仕事に耐えられず先に辞めてしまう、ということもあります。
この場合会社としては、引継ぎをきちんと行ってほしいため、退職日を延期するように言ってくるようです。
ですが基本的に退職日を延期する必要はありません。
後任が仕事を辞めるかどうかはあなたには関係のないことですし、そもそも長く勤めてくれる人を採用しなかった会社に責任があります。
もちろん寛大な心で退職日を延期しても問題ありません。
つまり会社はあなたに「お願い」することしかできず、それを受け入れるかどうかはあなた次第だということです。
退職後に後任が辞めてもあなたには関係ない
ごくまれに退職後に後任が辞めたから責任をとれ、といってくる会社があるようです。
これは退職後のことですから、あなたが何かしらの責任を取る必要はありません。
むしろ退職した人に会社が連絡してくること自体が非常識です。
- 引継ぎの内容が悪かった
- あなたの教え方が原因だ
- 社会人として責任をとれ
などとんでもないことを言い出しますが、全て無視して構いません。
何度も連絡が来るようであれば、労働基準監督署に相談してください。
Note
引継ぎは可能な範囲内で誠意をもって行うことが大切。
引継ぎが終わらないことを理由に、会社が「退職日をずらす」「退職後の出社を指示する」ことは出来ない。